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外野フォース

INTRODUCTION

この度、CRISPY EGG Gallery主催で竹下昇平、竹下晋平による『外野フォース』展を開催する運びとなりました。前期後期と二会場に別れ、前期は3331Galleryにて2020年10月6日〜12日。後期はCRISPY EGG Galleryにて10月15日〜21日の開催となります。前期は大作を中心に、また後期は小品を中心とした展示となる予定です。

 

竹下昇平は1990年生まれ。風景画を中心に発表しています。

風景をモチーフに都市のひずみや絵画の複層性を描く作家です。

また竹下晋平は、竹下昇平の双子の弟であり、同じく作家活動を行なっております。切り分けられた抽象的な植物や都市のイメージの断片をまるでドロッピングするかのように散りばめる絵画を制作しています。

 

本展は両作家の共通する「外」をテーマとし、ホワイトキューブ(3331ギャラリー)と家屋(CRISPY EGG Gallery)という異なる場所での展開となります。

是非ともご高覧いただけると幸いです。

OPEN

【1期】

[日程]

2020年10月6日〜12日

[場所]

アーツ千代田3331ギャラリー(104号室)

https://www.3331.jp/

[時間]

10月6日 16時〜20時

10月7日〜11日 11時〜20時

10月12日 11時〜18時

【2期】

[日程]

2020年10月15日〜21日(会期中無休)

[場所]

CRISPY EGG Gallery

[OPEN]

14時〜19時​

※ 1期2期共に、お問い合わせ先はCRISPY EGG Galleryとなります。

ARTISTS

竹下昇平

TAKESHITA SHOHEI

1990 静岡県生まれ

現在、東京で活動中。

 

ごく普通の街の風景をモチーフとしながらも、あくまでそれは表層でしかなく、画面や街などからせり上がってくる荒々しい筆致や植物を描くことで、世界の複層性や下層に潜む「力」の表現を試みている。

2019年『The Optic nerve and The Devices』展(CRISPY EGG Gallery) 作家紹介文 (​一部変更および抜粋)

竹下の絵を見ていて、まず最初に目に留まるのは植物の存在感でしょう。

一見、誰の記憶にもありそうな、どこにでもある街の風景が描かれています。しかし、その風景を覆い隠すようにして植物が画面の四方から迫り出し、単なる街の風景というよりも、森の中に人工物が隠れてしまっています。街を描いているにも関わらず、構造物と植物の主従が入れ替わってしまった風景は、どこか人類文明後の世界を見ているかのようです。

筆者は以前、竹下に作品「行きつけのベンチ2」のモチーフとなった風景に連れて行ってもらったことがありますが、植物の存在感が彼の絵ほど強くなく、ごくごく一般的な住宅街(吉祥寺周辺)の公園だったことを記憶しています。竹下の描く植物の存在感は明らかに竹下自身の想像力によるものであり、彼の描く「街の風景」の主人公が、街の構造物ではなくそこから湧き上がる植物たちであると考えているからだと思うことができます。

 

次に目につくのはその独特な空間です。

空気遠近法的な奥行き感が排除され、遠くのものも近くのものを同じ圧力で描かれています。

その空間演出の理由の一つに撮影方法があります。

竹下は現場で絵を描くことはしません。特定の場所を複数箇所からiPhoneで撮影し、その画像達を参考に絵を描きます。

iPhoneを参考資料用のデバイスとして使うとき、紙やパソコンとは異なる資料の閲覧方法が生まれます。

それは並行して同時に資料を見ることができない、という点です。紙であれば手元に並べて、パソコンであればデスクトップ上に資料を広げ、並列して見ることができます。しかし、iPhoneはデバイスのサイズの小ささから、一枚ずつしか見ることができず別の画像を見るためには必ず切り替えなければいけません。そのため、同一のモチーフを取り扱っていても、似通ったAの資料とBの資料の距離やサイズなどの微妙な差異には気づきにくく、修正されないまま単一の画面上に押し込まれてしまいます。

さらに画像資料はスマホの画面上で自由に拡大縮小されながら描かれるので、遠近感という前と後ろの差異は意味を失い、全てが等価となった風景が作られていきます。

故に単視点の整理された空間の広がりは失われ、代わりに入れ子状に組み合わされた視点により、鑑賞者の視点は中心を見つけられずにいつまでも画面を動き回らざるを得なくなります。

その画面の構成は、近作になるにつれて強烈に現れているように見えます。

 

また近作になるにつれ、絵の具を引きずったような跡や緩やかなストロークが現れ、植物と同じように街を、そして画面を走り抜けていきます。ただその絵の具の扱い方からは暴力性や激しさを感じず、むしろ画面全体に調和をもたらしています。引きずられた絵の具は、単にゲル状の物質としてキャンバスに張り付いているかのようにも見えますし、写真に写りこむフレアやゴーストのような光の一要素とも見ることもでき、物質であることと被写体であることを往復しています。これには理由があります。

この筆致は、制作の初めの段階で描かれています。つまり、竹下の絵画はこの筆致がまず先にあって、筆致とのバランスによって風景が当てはめられている、ということです。

制作の初期段階ではただの絵の具であったものが、風景が描かれることによって徐々に意味を持ち始める、という段階を経て仕上がっていくのです。つまり、風景はこの筆致との関係において、従属関係にあると考えられるのです。

  

街を覆う植物。多視点の画面。キャンバスに張り付く絵の具。

これは何を意味しているのでしょうか?

 

竹下は「ありふれた風景」を描いている、と語ります。

しかし、これはいわゆる「ありふれた風景」を意味していません。竹下はモチーフや視点、絵の具を一つの画面に重ね合わせながらも、断層のように表面の下に眠る層をめくり上がらせて、見せつけてくるのです。

 

地面の下に眠る地層の一つ一つは、「コンクリートの下に人間が生活しやすいように強制的に押し込まれてしまった植物たち」や、「元々は鉱物だったものから、絵描きが描きやすいように作られたゲル状の物質である絵の具」や、「鑑賞者が見やすいように整理された空間と視座」であったりします。竹下は、私たちが立っている地面だけではなく、重なり合う層をめくり上げて、表層に押し込められてしまった地層の断面を描いているのです。

 

この「都市」「絵画」「鑑賞」などの複雑な構造を同時にめくり上がらせる竹下の表現は、一見すると緩やかで懐かしい雰囲気とは反対に、「風景を描く」という行為がいかに複雑で現代的かを表していると考えられるのです。

​2019年8月 

CRISPY EGG Gallery石井弘和

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 『行きつけのベンチ2』2019・Acrylic on canvas・430×1200mm
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『テニスコート前』2019・Acrylic on canvas・830×1315mm
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『団地の公園』2020・Acrylic on canvas・220×273mm
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『草地』2020・Acrylic on canvas・220×273mm

【作家略歴】

 

竹下昇平

TAKESHITA Shohei

 

1990 静岡県生まれ

[個展]

2015『眺めのいい部屋』 (高円寺 pocke)

2018『しんこうけい』 (あをば荘)

2019『懐かしの今』(CRISPY EGG Gallery)

 

[グループ展]

2016

『新井五差路との二人展 すべて眺めのいい~ 』(spiid)

『カオスラウンジ新芸術祭2016市街劇「地獄の門」』 (もりたか屋)

『水野健一郎presentsグループ展「得体」』 (ギャラリー ルモンド)

『バラックアウト展 』 (旧松田邸)

 

2017

『フォースも覚醒』 (中央本線画廊)

『 春のカド7』 (artgallery opaltimes)

 

2018

『Identity XIV curated by Mizuki Endo - 水平線効果 - 』春のカドとして参加(nichido contemporary art)

 

2019

『真っ直ぐ曲がる』(にじ画廊)

『The Optic nerve and The Devices』(CRISPY EGG Gallery)

2020

​『回想的作話のレコーディング』(CRISPY EGG Gallery)

竹下晋平

TAKESHITA SHINPEI

1990 静岡県生まれ

現在、東京で活動中。

奥行きのある空間に抽象的な構造物が前後左右に手足を伸ばし、画面全体を覆い尽くしています。構造物は植物のようでもあり、臓器のようでもあり、絵の具のシミのようでもあり、建築物のようでもあります。

抽象的な構造物は複雑に絡み合いながらも、互いを求めてその手足を伸ばしあっているようにも見え、粘菌が増殖していくようなゆっくりだが力強い生成への意思を感じます。

 

竹下晋平は抽象表現主義のような「絵画がどのように立ち上がってくるのか?」を強く意識している作家です。作家の意思とは関係なく、まるで生命力を獲得するがごとく、絵画自身が立ち上がってくることを目指しています。

 

しかし、抽象表現主義が「熱い抽象」と呼ばれたような、「熱さ」は竹下には存在しません。作家自身の息吹や痕跡を絵画の立ち上がりのエネルギー供給源とするのではなく、むしろシャーレに実験体として入れたアメーバーが様々な条件下の環境で伸びたり縮んだりしている様をじっと眺めているような、冷静な視線があります。作家はその立ち上がりを「フォース」と言います。

 

竹下はRichard P.Taylorの『ポロックの抽象画にひそむフラクタル(原題Order in Pollock’s Chaos)』(日経サイエンス2003年3月号)』の論文を引き合いに、絵画的文脈や作家自身の物語に依存しない絵画を描こうとします。この論文を要約すると「ポロックのドロッピングはフラクタル構造をしており、故に人々は良いものと認識している」というもの。竹下にとって絵画の立ち上がりは当たり前に生成されるものであって、作り手である竹下はあくまでその観察者でしかありません。つまり、彼の例えるスターウォーズの「フォース」のように、絵画の生成は「すでにあるもの」で、あとは見えるか見えないか?の違いでしかない、と考えているようにみえます。

 

抽象表現主義時代にはなかった絵画の生成の新しい実験を試みていると言えましょう。

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 『夜のビルのガラス』2020・Acrylic and Pen on canvas・180 × 140mm
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『地元の風景のドローイング』2020・Copic and Pen on paper・363 × 255mm

【作家略歴】

 

竹下晋平

TAKESHITA Shinpei

 

1990 静岡県生まれ

 

[個展]

2017『Universal values』(ototoharu)

2019『evergreen』(gallery TOWED)

 

[グループ展]

2016

『KITAJIMA/KOHSUKE#13 〜池と怪物編〜』 (カタ/コンベ)

『地獄の門』カオスラウンジ新芸術祭2016(もりたか屋)

『BARRACKOUT』(旧松田邸)

『Debris*Lounge』(ゲンロン カオス*ラウンジ 五反田アトリエ)

2017

『竹下双子展 フォースも覚醒』(中央本線画廊)

2020

​『回想的作話のレコーディング』(CRISPY EGG Gallery)

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